企業組合とLLPの違いや、メリット・デメリット

法律

企業組合

企業組合とLLP

性質や異同、活用場面
-長所・短所-

会社

- 2015.07.06 -

企業組合とは

企業組合は、主に個人が集まって(組合員となって)、法人化する組織です。
株式会社と同じく、営利目的の活動を行います。
異分野のノウハウを持つ者同志が集まり、協働していきます。
個人事業主が集まって、組織活動する形態に適しています。

LLPとは

LLPは、主に法人や個人が連携して行う共同事業です。
(LLP=有限責任事業組合)
企業組合とは異なり、法人格を持ちません。
企業組合は個人が主構成員となります。
一方、LLPでは、法人も特段の制限なく、構成員となり得ます。

企業組合とLLPの共通点

上記の通り、企業組合とLLPは、複数による協業形態という意味で、似ています。
主な、原則的共通点をまとめると、以下の通りです。

内容 企業組合 LLP
責任 有限 有限
定款認証 不要 不要

いずれも、有限責任であることが、特徴です。
つまり、出資額の範囲でしか、事業上の責任を負いません。
株式会社等と同じく、リスクは軽減されるため、参加への抵抗感も低くなります。

企業組合とLLPの相違点/税制

一方、企業組合とLLPは、幾つか異なる点もあります。
主な、原則的相違点をまとめると、以下の通りです。

内容 企業組合 LLP
法人格 ×
決算等報告義務
課税方法 法人課税 パススルー課税
組合員への報酬 給与所得 事業所得
設立最低人員 4名 2名
加入 自由 組合員全員の同意
任意脱退 自由 やむを得ない場合のみ
組合員比率 1/3以上 -
従事比率 1/2以上 -
議決権

1名1票

任意設定
最低出資額 4円 2円
意思決定 一人一票 全員一致
株式会社への
組織変更
不可
役員 理事:3名
監事:1名
-

大きな差異の特徴は、その課税方法です。

パススルー課税とは、構成員課税のことを指します。
簡単に言えば、LLP本体へ法人税は課税されず、構成員への直接課税のみで、完結します。

例えば、デザイナーとプログラマーが5人で競業(システム開発)するケースで、考えてみます。

企業組合だと、各人へ給与という形で報酬を出すことができます。
黒字の場合は、企業組合、個人、の双方へ課税されます。
他方、企業組合本体が赤字であっても、各人の所得税には、何ら影響を及ぼしません。

一方、LLPの場合、黒字であっても、法人課税はされません。
さらに、その赤字額は、各人の所得税計算に考慮され、各人の税額が軽減されます。

こうしてみると、LLPの方が有利な印象を受けますが、必ずしもそうとは限りません。
組織が黒字の場合、給与(企業組合)の方が、給与所得控除の分、有利となる場合もあります。

給与所得控除とは、サラリーマン等、給与を貰っている人に認められる、一種の経費です。
実際の支出の有無に係らず、一定の経費性が認められます。

例えば、400万円/年の給与を受取ったとします。
その場合、134万円の給与所得控除が認められます。
よって、課税対象は、400万円-134万円=266万円、となります。

他方、LLP(事業所得)で受取った場合、課税対象は、そのまま、400万円です。

所得税は超過累進税率であるため、所得金額が大きいほど、この影響も大きくなります。
(超過累進税率:所得の大きさに比例し、税率も上昇)

法人税と所得税の兼ね合いを考慮しつつ、採るべき組織を検討します。

記事一覧へ

【注】本Tipsでは、投稿日時点の情報を掲載しています。記事に関する税務・個別具体的判断につきましては、最寄の税務署または顧問税理士・税理士法人等へ相談確認して下さい。万一当記事に基づいて発生したいかなる損害についても、弊社は一切の責任を負いかねます。